ねじの話

ねじの話

「ねじ」って何?

重い荷物を持ち上げて移動するとき、直接にまっすぐ持ち上げるよりも、木や鉄の板を立て掛けて、斜面を利用して引き上げたり、また回転させながら移動させたほうが良いということは、誰もがよく知っていることです。また急な坂道より、ゆるやかな坂道のほうが楽に登れます。つまり斜面は小さな力で、大きな仕事をする働きを持っているわけです。なぜ斜面はこんな働きを持つのでしょうか。ものを垂直に持ち上げるには、それに働いている重力よりも、大きな力を重力の方向と反対の方向にあたえなければなりません。

ところが、このものが斜面の上に静かにのっかっているとすると、この時はものに働く重力は、力の合成の法則にしたがって、斜面に直角な向きの成分と、斜面に平行な向きの成分とに分けて考えることができます。

斜面に直角な力は、面から同じ大きさで向きが反対の力が働いてつり合っています。このため、ものを斜面の上で移動するときには、この直角の力は考えずに面に平行な向きの力だけを考えれば良いことになります。斜面に平行な力は、ものを斜面に沿ってひきずりおろすように働いていますから、この面がもし完全になめらかならば、ものはすぐに斜面からすべり落ちてしまうでしょう。

しかし、斜面には面に目に見えないくらいの大きさのでこぼこが必ずあるために摩擦力が働き、ものは静かに斜面の上にのって動きません。この面に平行な力の大きさと、もとの重力の大きさとの割合は、力の合成の法則によって、水平面を底辺とし斜面を直角の対辺とする直角三角形の高さと 斜面の比に等しくなります。

したがって斜面の傾きが小さければ小さいほど、この力は小さくなります。そしてものを斜面にそって動かすためには、この斜面に平行な力より少しでも大きい力でさえあればよいわけです。このようにして、斜面をつかえば、ものに働く重力よりもずっと小さい力で、しだいに上に運び上げることができます。けれども、この場合ものを動かす距離は、まっすぐ上に持ち上げる時よりも、ずっと長くなるわけです。そして斜面の傾きが少なければ少ないほど、小さい力で上に持ち上げられますが、同じ高さに上げるには、長い距離を通らなければなりません。山道をいそぐ時、ゆるやかな本道をはずれて、細かくけわしい横道をえらんで近道とすることは、誰でもがやる斜面の応用である、といえるでしょう。

このような斜面の働きを利用したものが、ねじとくさびです。ねじは、働きの上から見ると、くさびを丸い筒に巻きつけたものです。細長い直角三角形の紙を、直角をはさむ辺の長いほうが棒の軸と直角になるように まるい棒に巻きつけると、三角形の斜辺は棒の上に「らせん」をえがきます。この「らせん」にそってみぞをつけたものがボルトのねじです。

みぞの部分をねじの谷と言い、でばった部分をねじの山と言います。もとの棒の軸を、ねじの軸と言います。ねじの山と谷が、しっくりはまるように、まるい穴の内側にらせんのみぞを掘ったものがナットです。ふつうは、ボルトとナットは対(つい)となって、ねじの働きをします。ねじを軸のまわりに1回転させたとき、ねじ山が軸方向に移動する距離を リードといいます。ねじの軸線を含む断面において、互いに隣りあうねじ山の相対応する点を、軸線に平行に測った距離をピッチと言います。

ねじはこのようなしくみを持っているので、その働きも斜面と同じです。つまり斜面にそって動かすことは、ねじの回転に相当し、上に持ち上げられることが、ねじの軸の動きにあたります。だから、ねじの回転の方向にわずかな力を加えただけで、軸の方向に強い力が働くことになります。ねじは斜面を棒にまきつけたものといえますが、その斜面の傾きが小さいほど、ピッチは小さくなります。傾きが小さいほど斜面の働きは大きくなるのですから、ピッチが小さいほど、ねじの力は強くなります。しかしあまりピッチを小さくして、強い力でしめつけると、ねじ山がつぶれたり、ねじ棒がちぎれてしまいますから、ピッチの大きさは、使いみちにしたがって、また棒の材料と太さに応じて適当にきめなければなりません。

ねじはJIS規格に種々のものが規格化されています。しかしこのすべてが製作され、在庫されているものでもない一方、規格にないものでも個数からいえば、非常に沢山つくられているものもあります。一回の発注数が数十万個以上なら、特別仕様でも問題はなく、逆に数千個以下であると非常に割高になります。例えば、建築用のハイテンボルトのボロン鋼製品、自動車用のアプセット頭ボルト、セムスタッピンねじ等、規格品以外ではあるが大量につくられているものがあります。一方航空機用ボルトは、ねじ山は米国規格、めっきはカドミクロメートということもあり、数量が少ないため、非常に高価なものとなります。通常の機械用ねじは、ねじ精度は6g、6H、ピッチは自動車用(細目)をのぞき、並目ねじが通常です。プラスチック用ねじには標準山形を使用しない場合もあります。

一般的なねじ(メ-トルねじ)以外に良く使われているねじとしまして、タッピンねじがあります。

ねじの機械的性質

ねじを使用する場合、ただねじを締め付けるだけではいけません。2つの物を結合させるためには、その条件にあったねじを使い正しく締め付けなければなりません。ねじを選定する際には寸法の他に機械的性質についても考えなければいけません。

機械的性質は、ボルト自体を万能材料試験機にかける方法と、太い場合にはボルトから試験片を削り出して試験する方法とが規定されています。簡単にチェックするのは、ボルトの硬度を測定する方法です。しかし冷間圧造品では、ボルト頭部、及びねじ先端部とも加工硬化しているので、軸部を切断してその断面を測定しなければなりません。

タッピンねじの検査は所定の硬度、板厚、内径の試験板にねじこみ、反対側にねじがでる迄のトルクを測定します。又、ねじ先端をつかんで、ねじ切るまでの破断トルクを測定します。タッピンねじは相手穴に、気をつかわなくてよいので、非常に使用が増しています。相手鋼板が薄いときは、板に押し出し穴(バーリング)加工を施し実質上板厚を増大します。相手下穴径の決定は作業性から微妙です。合成樹脂用は、ピッチや山角、山形状を変更して対応しています。

ねじの締付け

ねじ頭は、トルク伝達のクラッチです。日本では作業性から、すりわり付きねじは殆どなくなりました。十字穴付きねじと、その改良型、又六角穴付きねじ(ソケットスクリュー)と、その改良型に各種があります。しかし、工具の汎用性も必要です。ねじの締付けは、多くの場合ドライバーやスパナで行われています。重要部分のねじは、図面上に締付けトルクを表示し、締付けはトルクレンチを用いてチェックして行います。

ねじ軸力を締付けトルクで管理するためには、摩擦係数を一定に管理する必要があります。このため製造、保管、締付け時の取扱いや、塗油など注意が必要です。空気式、電気式の各種のドライバー、トルク制御方式のドライバーも普及しています。

ねじの材料

ねじ用材料は、圧倒的に低炭素鋼の使用量が多く、他に中炭素鋼(SC)、合金鋼(SCM他)、ステンレス鋼(SUS304他)、ボロン鋼が用いられ、船用に黄銅、特殊用途として、冷凍機、エアコン向きにアルミ青銅、その他にアルミ合金が使われています。

おねじブランクの製造・・ボルト、小ねじの頭部成形

おねじは圧造用線を切断し、頭部をふくらませて造ります。通常はヘッダーと呼ばれる自動圧造機に線を供給すると、材料を矯正ローラ間を通して真直にした後所定寸法に切断し丸ダイスに移送して、ダイ頭部から突出している部分を、2回にわけて圧造して頭部を成形します。

2回にわけるのは、流線(ファイバーフロー)が頭部で座屈するのを防ぐためで、最終形状を考えて予備据込の形状寸法を決めます。

しかし、ねじ径に比し頭径が過大のときは頭部を成形し切れないので太い軸部、太い材料からねじとなる細い部分は別に絞り出す方式をとります。

以前はこのため、多段打ヘッダー(ボルトホーマー)が用いられましたが、今ではダイスを2個しか用いない2ダイ3ブロー方式が広く用いられています。その他、2ダイ2ブローという生産性の高い機械も出現しました。これらの冷間圧造機は、M20程度で毎分60個、M6程度で毎分300~500個程度生産できます。

おねじのねじ山の製造

特殊なものを除いて、大部分のねじ山は平ダイス転造でつくられます。 これは固定平ダイスと、これに正対して移動する平ダイスの間に、ねじブランクをタイミングよく押しこんで転造するものです。

現在ではこの機械の剛性が向上したこと、平ダイスの寸法精度がよくなったことで、ねじ精度を充分満足します。

ねじ精度の検査は一般に通り・止りの限界ゲージで行われます。特殊ねじとして、タッピンねじの先端成形を、ねじ転造と同時に行う平ダイスも普通に行われています。

そのほか、ねじに座金をはめる作業を省略するため、ねじブランクに通常の座金より穴径の小さい座金を、自動機で挿入した後転造する、セムス、と称するねじも転造で作られています。

めねじ(ナット)の製造

M10以下の標準品はボルトと同じように、コイル状の丸線からナットフォーマと称せられる多段打自動プレスで、ナットブランクを作ります。材料に丸線でなく六角線を使用すれば、プレスの段数を減らすことができます。材料に平線(フープ材)を使用し、移送装置不要の通常のプレス方法によるナット製造も行われています。大径ナットは、M22~M36程度では材料に棒鋼を用い、熱間多段プレスでブランクをつくります。

ナットのねじ立て

めねじのねじ山は、一般的にタッパという自動機で切削によって行われますが、近年、転造めねじによるナットも多く生産されています。

タッピンねじ

タッピンねじはねじ山転造後、浸炭焼入、焼戻します。普通メッシュベルト式コンベア炉で、連続熱処理されます。タッピンねじに座金を組みこむときは、防炭用の座金に銅めっきしたものや、浸炭されない材質のものを使います。

使われるねじ基本に関するJIS用語

基準山形(basic profile)

ねじ山の実際の断面形を定めるための基準となるねじ山の1ピッチ分の形状。ねじの軸線を含んだ断面形についていうのが普通である。基本山形、基本形ともいう。リード(lead)ねじのつる巻き線に沿って軸まわりを一周するとき、軸方向に進む距離。

ピッチ(pitch)

ねじの軸線を含む断面において、互いに隣り合うねじ山の相対応する2点を軸線に平行に測った距離。

リード角(lead angle)

平行ねじの場合は、ねじ山のつる巻き線と、その上の1点を通るねじの軸に直角な平面とがなす角度をいう。テーパねじの場合は、ねじ山の円すいつる巻き線と、その上の1点を通るねじの軸に直角な平面とがなす角度を、その点を通るねじの半径線に直角な平面に投影した角度をいう。特に指定のない場合は、有効径を定義するために用いた 仮想的な円筒又は円すい上のつる巻き線についてのリード角を指す。

おねじの外径(major diameter of external thread)

おねじの山の頂に接する仮想的な円筒(又は円すい)の直径。

おねじの谷の径(minor diameter of external thread)

ねじの谷底に接する仮想的な円筒(又は円すい)の直径。

めねじの谷の径(major diameter of internal thread)

ねじの谷底に接する仮想的な円筒(又は円すい)の直径。

めねじの内径(minor diameter of internal thread)

ねじの山の頂に接する仮想的な円筒(又は円すい)の直径。

有効径(pich diameter)

ねじみぞの幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒(又は円すい)の直径。

呼び径(nominal diameter)

ねじの寸法を代表する直径で、主としておねじの外径の基準寸法が使われる。

フランク(flank)

山の頂と谷底とを連絡する面。軸線を含んだ断面形では、一般に直線になっている。ねじ山の斜面ともいう。

圧力側フランク(pressure flank)

ねじ込まれて荷重のかかった際、直接荷重を受ける側のフランク。

遊び側フランク(clearance flank)

圧力側フランクの反対側のフランク。

山の頂(crest)

ねじ山の両側のフランクを連絡する面。おねじでは最も外側に、めねじでは最も内側にある部分。山頂ともいう。

谷底(root)

ねじみぞの両側のフランクを連絡する面。おねじでは最も内側に、めねじでは最も外側にある部分。

フランク角(flank angle)

ねじの軸線を含んだ断面形において測った個々のフランクが、軸線と直角な直線となす角度。(図のd1とd2)

ねじ山の角度(included angle)

ねじの軸線を含んだ断面形において測った隣り合う二つのフランクのなす角度。ねじ山の全角ということもある。ねじの角度ともいう。

ひっかかりの高さ(thread overlap)

互いに同心にはまりあうおねじとめねじの軸線を含んだ断面形において、おねじの山の頂を連ねる直線とめねじの山の頂を連ねる直線との間を軸線に直角に測った距離。

ひっかかり率

ひっかかりの高さ(H1′)の基準山の高さ(H1)に対する百分率。